樟の森の研究室

斐伊川が久野川や三刀屋川と合流する地点、木次線がことことと走る線路のすぐそばに住まいし、ここで生きる術と学びを記していきます。

地方創生に必要なのは経済循環の向こうにあるインプロビゼーション

 藻谷浩介氏がPRESIDENT Online(2016年09月09日)でこう記しておられる。

そもそも地方創生の政策のイノベーティブなところは、交通インフラ整備に工場誘致、という旧来の発想は通じないことを直視し、「地域内の経済循環の拡大」が必要だと明確に掲げたことにある。

 http://lite.blogos.com/article/189813/?axis&p=4

 論旨はだいたい以下である。

・だというのに、地方創生は補助金で箱物つくることだと、未だに考えている議員が大半である。経済循環が何かさえまったく理解できていない。

・そんな中、地方に無駄な補助金を投入するくらいなら、東京一局集中を加速することに注力して、都市間競争を勝ち抜かねばならないという論陣が力を増してきた。

・地方でも成功しているケースは多くあり、大都市こそが学ぶべきである。人材や市場が過少な中でのビジネスは、まさに東京でこそ求められている。

 藻谷氏の論は大筋ではおかしくないのだが、ミスリードを起こしがちだと思う。経済循環がわからない議員を嘆くのはわかるのだが、産業連関表が読める(たとえば自営業者や中小企業が自社の経営に利用するという意味で)人がどれだけ地方にいるのだろうか。私も解説つきで読めるレベルであって、理解しているとは言いがたいのだが。(中国地方、島根県岡山大学の中山良平教授の貢献もあって、大変めぐまれているのに。中山氏の著書『まちづくり構造改革―地域経済構造をデザインする』2014(日本加除出版)は、わかりやすく有益です)

 《地域内の経済循環の拡大》を、どう理解し創生につなげるかについては、その欠点があまりに経済学(均衡理論)らしいことによるのだと思う。経済学は分析のツールであって、ツールでしかない。創生は分析ではないのだから、そこを勘違いしないことだ。

 いや、いや、それ? もちっとヒントを、と誰でも思うだろう。私もそう思う。

 ここからが本題なのだが、ジェインジェイコブズの勉強会をやろうと検討中なのだ。

 ジェインジェイコブズ(以下JJ)は今年2016年が生誕100周年にあたるし。なにより経済学プロパーからは非難囂々、経済学をわかっていない素人が何をいうか爆弾が多数投下されている。

 そんな中、塩沢良典氏がどこかでこんなコメントをしていて、ハッとしたわけだ(あとで出所いれます)。

《ジェインジェイコブズは経済は散逸構造であると言いたかったのではないか。生態学と経済学をつなごうとしたのだ》

 そして、触発されて、手元にある『発展する地域、衰退する地域』を改めて手に取りました。JJの著書は理解するのではなく、道を示そうとしている灯りなのだと、そうひらめいた。

 その道は読者ひとりひとりが見つけ歩むべきもの。対話や討議が必要。できればひとりでなく。ん〜、でも誰もいないし、と思いながら文庫解説をみると、なんと片山善博氏が寄せているではないですか。そのなかで、鳥取県知事時代の事例をあげていたので、それをほじってみました。

 JJはインプロビゼーション(improvisation:ジャズの即興のような)という用語で示しているが、地方創生の「創生」にあたるし、その創生を駆動するのはイノベーション創発)であり、創発の本質はこのインプロビゼーションであろう。すなわち、「要素間の局所的な相互作用が複雑にからみあいながら新たな秩序を形成していく場の力」である。

 さて、事例をみてみよう。→のついた仕組と心情は私の想定である。

【学校給食の地産地消インプロビゼーションをおこすか】

ステージ1)【政策】学校給食の地産地消を促す

      →仕組:栄養士の献立表にもとづいて食材を調達するには地元調達が困難。

      →心情:反発を受けて進まない。

ステージ2)【修正試行】ある栄養士が地元の作付けを調査。

       野菜の収穫量に基づいて献立を作成。

       結果:地産地消率がアップ。

      →仕組:ロジスティクスを担うJA等の組織が動く

       ※ロジスティクスの要諦:必要なものを・必要な時に・必要な量を・必要な場所に

      →心情:コミットメントしている個人が「うれしい」。昂揚感の醸成。

ステージ3)【創発インプロビゼーション

       地元農家が(献立表をみて)、地域外調達をしている食材のなかで、

       地元で調達・作付が可能な野菜類の作付けに着手。

       結果:地産地消率がさらにアップ。

      →仕組:ステージ2より高度なロジスティクスとなる。

          新たな作付が農家にとってプラスとなるかどうかは不透明。

          市場原理とは違う価値観が駆動しながらも、市場とも連動する

          必要がある。

      →心情:地域のため+長期的信頼関係に資する意志決定が農村では結果とし

          て利得が高い。

 場をつくるためには、プレイヤーがステージ3の心情(あるいは規範)を共有しているかどうかが鍵となるのではと思う。農村であれコミュニティであれ大規模システムに抗して経済をまわすためにはこれがアドバンテージとなる。従来、非合理性や因習性あるいは障壁障害として捉えられていたことである。マイナス評価をプラスに捉えるための概念を与えてみたいと思うが、現状、材料不足であり、「宿題」としたい。